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天井のない住宅

kamakura,2018 house

OVERVIEW

新しく分譲された住宅地の新築計画。
周囲にも同じくらいの大きさに分割された造成地が並んでいる。
30坪くらいの2階建ての住宅でリビングは1階。リビングを通って2階の部屋に行けるようにというのが、間取りに対するおおきな要望だった。

また、家全体の雰囲気を新築の真新しいものではなく、経年変化していく良さを味わえるようなものとしたいということもあり、限られた敷地と予算組の中で、LDKの天井を剥がして、躯体をそのまま露出させることで天井の高さを上げながら、新築時特有の新しい感じを避け心地よい落ち着く空間ができるように配慮した。露出した梁は、経年変化で徐々に濃い色目に変化する。

天井をはがすと内部の梁がみえる

はがされた天井に見える梁は、大きさの異なる梁や下地や金物が見える。構造体を綺麗に均等に並べなおす方法もあるが、あえて並べなおすことはせずに、上部の過重や柱のスパンによってオートマチックにきまった、梁組をみせることで新築ではなくリフォームしているような質感となるように考えている。壁や床には珪藻土や、無垢材で仕上げられており、新築でありながらざらざらとした質感をもったラフな感触を感じることができる。

窓のレイアウトも同様に、きれいに並べるのではなく、LDK全体のバランスの中で、ダイニングやリビング、キッチンとそれぞれの機能から個々に窓のレイアウトをしている。そのためばらばらと、散らばるように窓がレイアウトされていて、太陽の動きと共に室内に必要な光が変化しながら落ちてくるように工夫した。

梁のデザインや窓の位置など綺麗にレイアウトするように全体のルールを決めてしまうのではなく、ばらばらと散らばるようで、それぞれのバランスが取れているような、計画しているようで全くしていないような状態を目指した。そうしたある種、気の抜けたような空間が、居心地の良さを生み出してくれるのではないかと考えている。

なお、リビングのドアは、アンティーク家具が好きな施主より支給いただき、建具屋さんにてドアノブを取り付け、現地に搬入し枠回りだけ新調した上で取り付けている。昔のドアなので取手の部分が少し高い位置にあったり、少し締まり具合が弱かったりと色々あるが、そうした部分も現代の建材にはない味わいがあると感じた。

所在地:神奈川県鎌倉市
規模:約106㎡
主用途:住宅+オフィス
竣工:2018年5月
意匠計画:IYs-Inoue Yoshimura studio-
施工:サカエ建設
写真:渡邊 聖爾