OVERVIEW
東急新丸子駅前の商店街に位置する賃貸不動産の店舗とオフィスの計画。
敷地は防火地域内に位置しており、防火地域内の建物は防火の観点からコンクリートや鉄骨建物が多くなるのが必然であるが、本計画では、延べ床面積が70㎡と小さく、且つ2階建てであったため、準耐火建築物として木造でも建てることができた。コストのことも考慮し木造にて計画している。
本建物が建っている場所は、もともと向かって左側のビルとつながった1つの古い建物が建っていた。それをほぼ半分だけ撤去しカットした壁面を補修して、新たに隙間のような敷地を作り出すというところからのスタートとなった。
駅前商店街の既存建物を切り離して敷地をつくる
もともと建っていた古屋
古屋解体後
無事に解体と補修は終了したが、敷地自体は微妙にクランクしている上に、奥に行くほどに細くなっており、ショートケーキの1ピースのような歪な形状をしていた。プランニングとしては、ほぼ敷地なりに目いっぱい計画することとしたが、一般的な階高で計画すると空間自体が暗く貧相なイメージなってしまうことを懸念し、天井高さを大きく4mとして大きな木製サッシを設置した。
天井目いっぱいの木製サッシからは、柔らかい光が奥まで届き、洞窟や谷の隙間のような心地よい空間となることを意図した。2Fへ上る階段は、階高4m超とかなりの高さがあるので法規的な制限で途中に踊り場を設ける必要がある。階段自体の長さもそれなりに長くなっていったが、クランクしている壁面にへばりつくように最小限に階段を設け、上方の吹き抜けから明るい光をとり込むことで、光に誘われるように上っていくような、地形の中を歩いていくような階段になっている。
また、駅からの視認性を考慮するために、看板建築的なファサード面だけを大きくした。
所々角を落としたR形状は、来客に対しての柔らかな印象をつくりたいという施主の要望で、階段や壁面、家具にいたるまで、あらゆる角がR形状に加工されている。
本計画では、コスト、駅前からの視認性による外観、施主からの要望による内装、敷地形状による計画、隣人からの要望、法規的な制限、様々な別角度からの意見を考慮しながら、1つにまとめるわけでもなく、それぞれの部分がそれぞれに成り立っている駅前ならではの計画となった。
所在地:神奈川県川崎市
用途地域:近隣商業地域(防火地域)
規模:約70㎡
主用途:事務所
竣工:2021年2月
施主:合同会社invest assets
ディレクション・家具造作:株式会社FIND
意匠計画:IYs-Inoue Yoshimura studio-
照明計画:IYs-Inoue Yoshimura studio-
構造設計:川田知典構造設計
施工:株式会社興建