WORKS

北参道のオフィス改修

Tokyo,2022 interior

OVERVIEW

北参道駅近くの賃貸スペースのオフィス改修。

本改修は、IYsの北参道事務所として利用している。当初真っ白な壁紙と眩しいくらいの光量の蛍光灯のよくあるオフィスの雰囲気で貸し出されていた。改修する際に考えたことは、まず白いことをやめることだ。私自身、白い空間にいると堅苦しく落ち着かない。改修したての真新しい状態の空間であったが、白い壁と天井をやめて、木質の空間とすることにした。

別の仕事の合間を縫って計画しなければいけないこともあり、最小限の手間で工期を短縮し、コストを抑える改修とした。方法としては、解体するものはなくし、床材もそのままで、白いクロスの上から、5.5mmの合板を貼るだけの改修とした。これで、廃棄物もなくなり、解体という工程が1つ減ることになる。一方で煌々と光る白い照明がたくさんついていたが、それらは全て外し代わりに、ライン照明を天井から吊ることでベースの照明とし、照明自体がインテリアとなるような計画としている。

照明は、四角いオフィスの形に対して、斜めに配置し、四角い空間の単調さを意図的に壊し、光の濃淡が場所ごとに生まれるように計画した。また、柱と梁によって分節された4つのエリアにまたがるように配置することで、各エリアを緩やかに繋げるよう意図した。照明の色温度は壁面や天井の木目に反射して色温度よりも、やや暖色になることを考慮し、3500Kの白色に近いほんのりオレンジ色が入った中間色とすることで、適度な暖かみを加えている。

このライン照明は、照明自体に天井から吊り下げる金物をジョイントする部材が付いており、天井や配線ダクトから簡易的にワイヤーでつることができる。通常は吊りボルトを利用してライン照明を配置するが、吊りボルトやCチャンネルの鋼材が見た目にも重たく、空間を邪魔してしまうが、本照明計画ではそうした部分を解消できる照明を利用した。

木質の合板は、ほんのり木の香りがするので、オフィスが心地よい暖かみと木の香りに包まれた。この感覚は写真では伝わらない心地よさである。世の中の大半を占める白く明るいオフィスは、すべての空間を均質化し空間のムラをなくしていくという考え方のもとに計画されていると感じる。均質=価値という概念は戦後、近代の日本が辿ってきた空間の価値観であるが、こうした考え方は、実際にそこで働くひとの快適さを考慮しているとは感じられない。働く場であっても、住まいのような心地よさと快適さは必要で、そこで働くひとの快適性を考慮することは、仕事の生産性も上げることに繋がるし、円滑なコミュニケーションにもつながる。実際に、社内での雑談や歓談のひとときが増えた。単純に広い場所がそうさせるということもあるが、インテリアの雰囲気によるところも大きいと感じている。

なお、本改修は、図面を描かずにスケッチのみの伝達とし、工期も3日で終了した。おおがかりな改修をせずとも、簡単に心地よいオフィスはつくれるのではないだろうか。

所在地:東京都渋谷区千駄ヶ谷
用途地域:商業地域
規模:約75㎡
主用途:オフィス(IYs北参道事務所)
竣工:2022年
意匠計画:IYs-Inoue Yoshimura studio-
照明計画:IYs-Inoue Yoshimura studio-
施工:株式会社坂牧工務店

主な素材
床:タイルカーペット(既存まま)
壁:ヒノキ合板
天井:ヒノキ合板
照明:ライン照明(グローリー

設計期間:1日
施工期間:3日