WORKS

開閉する茶室

TOTTORI,2006 public

OVERVIEW

鳥取県の里山にある茶室の計画。

里山とは、山と街の中間にある人の手が入っている監理されている山で、この里山も施主である造園家が自身の植物を植えて管理しているエリア。今回の計画に求められたのは、造園家である施主が顧客を招き、自身の考えや計画をプレゼンテーションする場所であり、周囲にない人を引き付ける面白いものを計画してほしいという、ざっくりとした要望であった。敷地には、施主が植えたしだれ桜や、やまももなど、様々な樹木がギャラリーのように植えられていたので、私たちは、それらの植物を鑑賞しながらお茶を飲めるような場所があったらよいのではという提案をした上で、施主家族と話し合いながら案を練っていった。

施主は茶道を嗜んでおり、色々な大きさの建物を検討していく中で、小さな茶室程度の大きさの空間を敷地にいくつかちりばめて、季節や気分で場所を変えて楽しめるようになっているほうが、広い敷地全体を楽しめるのではということで、敷地に5つの立方体を計画した。

この建物はそのうちの1つ。あとの4つは予算などの関係もあり、まだ建設未定だが、最終的には増殖していく計画だ。
直線のガイドラインに沿って等間隔の立方体が向きを変えながら並べる

各立方体は、外枠で2mの立方体という小さなものとして計画している。壁厚を加味すると、内寸は、1.6m程度のさらに小さな空間で畳2枚分よりも一まわり小さな空間。大人が4人は入れるぎりぎりの寸法に設定してあり、実際に入ると人と人との距離感がとても近くなる不思議な感じになる。立方体は内部ではなく、壁の2面が270°回転しバタンと開くことで、外部になり鳥のさえずりや風で木々が揺れる音を聞きながら、お茶を楽しみという非日常的な体験ができる。

外壁はステンレスの鏡面貼りで、閉じているときは外部の緑を映し込んで周囲の環境に溶け込むように仕上げている。

四角い箱の両側が開いたり閉じたりする

本計画は、井上、吉村ともに大学院在籍時のプロジェクトで且つセルフビルドであった。各木材や金物、外壁のステンレスは、工場まで自分たちで足を運び選定し建築し、施工中は施主ご家族のご厚意で施主宅に寝泊まりさせていただきながら延べ3週間程で施工を完了した。全く何も知らない学生の遊びの延長のようなプロジェクトであったが、施主の寛大な心によってなんとか1棟を完成することができたことに感謝している。

所在地:鳥取県
規模:4㎡×5つ
主用途:茶室
構造:木造
竣工:2007年
意匠計画:IYs-Inoue Yoshimura studio-
施工:IYs+前田造園+学生ボランティアによるセルフビルド

外壁:ステンレス鏡面仕上
内壁:ラワン合板無塗装(一部塩ビシート貼)
特殊丁番:タキゲン