WORKS

桜並木のワンルーム住宅

machida,2019 house

OVERVIEW

動画 建もの探訪

「公園を住まいに引き込む」

新しく分譲された土地に建てる新築住宅の計画。周囲は、低層の住居地域で30坪程度の同じような大きさの住宅が並んでいる。敷地は、南東の角地で道路より2m程度上がっており、目の前には広大な公園と、道路沿いに綺麗な桜並木が並んでいる。

大きな吹き抜けや、桜が見える大開口等、様々な要望が出てはきたものの、敷地に対してとれる最大の床面積は限られており、検討していくうちに、吹き抜けを取ることと要望される空間の数が合わないことに気が付き、最終的には吹き抜けを取らずに2Fの床レベルを一般的なレベルよりも1m程度上げて、約3.4mの天井の高いホールをつくる計画とした。

玄関を入ると玄関ホールはなく、まず最初に天井の高いLDKへとでる。このスペースを住宅のスケールというよりは外部が延長された半屋外のスペースのような空間になるように考え、窓の配置も高いところや低いところ、大きさもそろえずにランダムな光でホールが満たされれうように計画している。階段を上がっていくと少しずつスケールダウンし、徐々に従来の住宅のスケールへと変わっていく。大きな公園から桜並木をぬけ、半屋外のテラスのようなリビングを通り、少しずつ上ってベッドルームへと至る。その間には特に仕切りはなく、ワンルームとなっている。

通常住宅を作る場合には、各機能ごとに部屋が割り当てられ、それらをドア等で仕切っていくことで計画することが常ですが、ここでは仕切るということではなく、スケールを徐々に変化させていくことで外部の空間から住宅内部の空間へのグラデーションを作ることを考えた。窓の配置もできるだけ、各部屋の機能から考えるというよりは、光のグラデーションや視線の抜け方を優先して割り当てられている。

結果として、施主は朝日が昇ってから、日が沈むまで、日の光に応じて移動して暮らしているとのこと。都心近郊のよくある分譲された住宅用地においては、経済性の原理から建物を建てることで精いっぱいで庭等をとる余裕はない場合が多い。そうした状況の中でも、住宅の高さや窓の配置等少しずつコントロールしていくことでより快適で心地よい居住空間を得られるのではないかと考えている。

また、南東南西側に大きく開けられた窓によって冬場の日射を効率よく室内に取込み、外壁とサッシの断熱性能を上げることで少ないエネルギーで住宅の熱環境を整えることができるよう工夫しており、1FのLDKに設けられた温水式の床暖房によって家全体が暖められ、冬場でもエアコンに頼らない空調計画となっている。

ちなみに、この住宅の施工は施主である旦那さんが大工で、ほぼ一人で組み上げ、インテリアは奥様が主体となって夫婦共同で作り上げた住宅で、手作りの本棚や、キッチン、カウンターなどがあふれ、住宅ではありながら大きな家具のようにも見え、大きなホールの中にいると公園の中の大きな書斎でたたずんでいるような感覚になった。

所在地:東京都町田市
規模:約106㎡
主用途:住宅+アトリエ
竣工:2019年1月
意匠計画:IYs-Inoue Yoshimura studio-
構造設計:川田知典構造設計
施工:株式会社坂牧工務店
写真:渡邊 聖爾

主な素材
屋根:ガルバリウム鋼板
外壁:軽量ラスモルタル+アクリル樹脂系塗装
サッシ:アルミ樹脂複合サッシ(ペアガラス+LOWeガラス)
内壁:ビニルクロス、ラワン合板、LVL等
キッチン:大工造作、天板:モールテックス
洗面:大工造作
床材:ホワイトオーク挽板複合フローリング
空調計画:第3種

設計期間:約6か月
施工期間:約6か月

施主の声:はじめましてのお打ち合わせで設計プランを数パターン出していただき、多様なプランにワクワクしました。夫婦で意見が分かれてどちらの意見を優先するかと悩んでおりましたが、IYsさんにそれぞれの意見を上手くまとめたプランでご提案いただき、夫婦で納得する家づくりができたと思います。(houzzより引用)

メディア:100%LIFE
メディア:KLASIC
メディア:暮らしとおしゃれの編集室
メディア:リクルート発行雑誌「注文住宅」2020年3月特大号
メディア:渡辺篤史の建もの探訪 2020年3月28日~放映
メディア:建もの探訪 youtube
メディア:エクスナレッジ社「はじめてのマイホーム建て方買い方完全盤 2020-2021」2020/9/2発売
メディア:「居心地のいい家をつくる注目の設計士&建築家100人の仕事」2021/02/22
メディア:DESIGNERS FILE 2022
メディア:日テレ「ゼロイチ」2022.05.07放映
メディア:書籍 「理想の暮らしをかなえるリビングの本」 2022年11月