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小金井の住宅のお引き渡し

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IYs井上です。

世界がコロナの終息を祈っている最中で、戦争が始まるという混乱。これからどうなっていってしまうのかと不安な日々です。世界は力で弱者をねじ伏せるのが正解となると、こちらも武器を、、、的な話になるのだけは避けたいですね。力に対しては力ではない結束をどうつくるかということを考えていかなければならないと思います。そもそも、戦争を望んでいるのは1人しかいないような気もしますが、だれか1人に権力が集中することの怖さを改めて感じています。

さて、

昨年より進めてきた小金井の住宅は、建物部分のお引き渡しを無事に迎えました。コロナの影響で世界的に資材供給の循環が崩壊しており、物が全く入ってこないという中で、なんとか在庫品やあるもので作るということを考え、運よく切り抜けました。

今回の住宅は、駅前の3階建てくらいの住宅がひしめく密集地。且つ、北側4mの道路にのみ接道し、東、南、西を高い建物に囲まれるという状況でした。なんとか明るく開放的な空間を。家族が分断されないワンルームのような住まいを目指して設計をすすめてきました。


前面道路に段々に迫り出す外観

3階建ての住宅は、おのずと階段が住まいの中で移動動線として大きな部分を占めることになります。今回の住宅は、その階段を一つの空間的な中心に据えて、上階へいくほど吹抜が大きくなり、天窓から玄関ホールまでひとつながりの大きな階段室のようなデザインになっています。


玄関から見上げる。天窓が見える

なので、日照条件の悪い立地ながら、玄関ホールは明るく開放的です。


3階から玄関を覗く

内部が光を求めて上へ行くほど大きくなるのに沿って、外観も道路側に迫り出しています。また迫り出した建物は、足ものと駐車場や庇の役割を果たし雨のかからない機能的なポーチをつくっています。

階段は、施主ご夫妻の希望でなるべく透過性のあるものに。鉄骨で製作しています。特に手摺の設計と施工がとても大変でした。

床から生えているような細いスチール棒で支えるために、下地に受けのビスを入れ込んだり、溶接したり様々な工夫で、すっきりとした見た目のものになっています。

また、1Fから3Fまで手摺笠木の木がひとつながりになっており、目で追っていくと縦に空間が繋がるようにガイドの役割を果たしています。

手すりは角でカーブしています。


カーブする手摺

木は予め、曲率を指定し工場で曲げてきたものを設置。このカーブは単なる見た目だけではなく、日々の動きのなかで、角が丸い方が動きやすいということを考慮した結果、カーブさせるというデザインにいきついており、その曲線のデザインを部分的に他の箇所にも転用することで、全体のデザインコードとなっています。

最初からカーブの空間をつくりたかたったというわけではなく、プランを練っていく中で生まれたデザインで、そうした種々の問題を解決するものが、全体を印象付けているという流れです。


奥の小さな吹抜もカーブ

小さな吹抜ですが、効果は大きく、奥の方が照らされることで閉塞感を緩和できます。正味1畳ない吹抜。

2Fには小さな洗面を設置。メラミン天板と既製品のミラー。


上を見上げる

空が見えると、不思議と開放的な気分になります。朝起きて今日晴れてるのか曇っているのかすらわからない都心のマンションもあります。都内で住む時点で、日当たりとかそういったことは割り切ってなくてもよいと思う方もいらっしゃると思いますが、どんな立地でも明るくできます。

今回の青空は、隣地との隙間を探し出して視線の角度などを計算して配置した窓によるもの。天窓は、VELUXというデンマークのものを採用。30分の耐火性能もあります。天窓は、明るさに関しては効果絶大です。雨仕舞が心配ですが、造作ではなく既製品を利用することで、リスクは最小限となります。またVELUXは、日照時間の少ない北欧ならではの天窓で非常に高性能で雨仕舞に関しても保証が長期間つき安心です。

最上部は、シナ合板にて仕上げてます。天窓は電動ブラインドを仕込んでます。この納まりも、とても苦労しました。職人様ありがとうございます!最上階までくると本当に明るいです。最上部は子供の部屋や寝室、バルコニーがあります。

バルコニーも4.5畳くらいですが、外を感じる空間て大事です。


カーブが続く空間

照明は、真鍮のブラケットをメインに、部分的にペンダントライトやダウンライトを使いわけています。間接照明は夜に効いてきます。照明はなるべくつけたくないので、最小限にとどめたいと思いながらも、暗いとまずいので、効果的に反射光が得られる場所を選んで設置しています。

ダウンライトは、なるべく使いたくないので、本当に必要なところにしか付けていません。


玄関ホール

3階建て住宅、都心の密集地、色々と条件の悪いこともありますが、こうした条件でも明るく快適な空間はつくれるのだという事例になればと思います。また、こうした開放的な空間は、構造家による構造計算あって実現するもので、普通の工務店では恐らく難しいところもあるのですが、今回の構造家はいつもですが、川田知典氏です。合理的でコストに配慮した計画をしていただいています。

また、細かな設計を丁寧に施工し見えない部分まで施工いただいている、職人集団の坂牧工務店様。こうした職人魂をもった技術者が一人でも多く残ってほしいと思うこの頃。大変で責任も大きな仕事は、若い人がやりたがらないとも聞いています。。。社長も大変かと思いますが、集まっているみなさん良い方ばかりです。

残るは外構。このよい連鎖がまた続くように、精進します。