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事例解説 no.3 「北道路でも大丈夫?快適に光を取込む家」

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IYs井上です。11月中旬ですが、まだまだあったかいですね。

さて、私たちが設計した住宅の事例解説の3つ目を記載していきます。

今回は、北道路接道の2F建ての住宅。場所は鎌倉です。土地を探す時には、南側に道路がある土地を探すことも多いと思いますが、都心近郊の住宅地では、そういう土地はなかなか出てこないもの。今回は、北道路接道でも効率よく光を取り入れた住宅を解説。

「北側接道は採光が不利?」

今回の土地は、北側と東側に道路がある土地で、しかも南側の土地は2m程度上がっており、南からの良好な採光がうけずらい谷状の立地でした。


周囲は丘に囲まれており谷のような立地

谷のような立地の場合は、光が家の中に届きにくいというデメリットが。しかもクライアント家族の希望は庭と繋がるLDKをもった1Fが居住スペースの家を望んでいました。

私たちは、配置もいろいろと検討し、1Fの平面を最大限にとって、2Fを小さくし、余った余白を吹抜にして上部から光を取込む計画を考えました。


上部に大きな窓があるリビング

2Fは、個室があるだけで、1Fの方が広いので、吹抜がたくさんとれてます。南側は、隣地の擁壁があるのですが、上部に窓があると空がみえるため、そうした閉塞感をあまり感じません。


2Fの個室はブリッジ状に繋がる

吹抜は、大中小3か所あり、1Fの各所に光を落としています。空隙がおおい家なので、視線が自然と外へと抜けていき、外にいるような感覚に。


キッチン上部にも小さな吹抜があり、明るい


断面スケッチ、上部から光が入る断面計画

吹抜は、立体的に2Fとつながっていて、家全体が大きなワンルーム状の空間になっています。なので、100㎡強(30坪強)の床面積ですが、とても広々した感覚があります。

断面的に光が落ちてくる様子は、洞窟のようなイメージであると、設計時に考えていました。

断面的に視線がぬけていきます。

ダイニングは、天井高さ2.2mの低い場所で落ち着いた雰囲気に。庭と繋がる大きな引違窓とつながっています。


南側の擁壁が見える窓。断面的に繋がる空間は風通しも良く、空気が抜けやすい。

ダイニングテーブル上部はペンダント照明が。フリッツハンセンのもの。

キッチンは、大工造作の木製キッチンで、天板はステンレスのバイブレーション仕上げ。大工さんによる造作なので、キッチンメーカーのものよいはリーズナブル。食洗器は、ボッシュのW600タイプを選択。海外の食洗器は、大容量でゼオライトヒーターがついており、乾燥もしっかりしてくれます。


リビングとダイニング横には、一部子供たちのスペースがあり。開口は小さくあけられていて籠り部屋のようになっています。今はピアノが置かれる。


籠り部屋の内部、開口高さは1.4mほど

キッチンからの眺め。上部には、ワークスペースがあり、会話もできる。

こちら2Fのワークスペース。2Fからは、大きな窓から遠くの景色が見えます。

こちらは、2Fの廊下に設けた小さな手洗い場。吹抜と大きな窓で、開放的な手洗いに。

キッチンに差込む光が心地よい。晴れた日は、外にいるような感覚です。周囲が囲まれていることを忘れます。効果的に壁で隠すことで、空や抜けている部分を見せています。


廊下も1つの居場所に。

「ユーティリティスペースの工夫」


こちらは洗面脱衣所、両方から引戸で入れるので、普段は通り抜けられる廊下として機能しているので、掃除も楽で、窓がなくても閉塞感のない場所に。窓がない分照明の工夫で、演出。小さな収納も造作しています。

カウンターは、木ですがウレタンという塗膜塗装で、水場でもOK。洗面ボウルは、1つの大きなボウルに2つの水栓がある。サンワカンパニーのもの。


WICは、家族共用で3畳ほど。効率よく棚を設けて容量を増やしてます。


WICはカーテンで仕切られてます。

階段は、鉄骨と木の踏板を組み合わせて視線が抜けるように。デザインは設計事務所で、製作は鉄工所。


外観は、シンプルな切妻屋根。切妻屋根は、屋根の納まりを最小限にした、原始的な形状なので、雨仕舞がよい。グレーの外壁は、軽量モルタルを左官した上に、塗装をして仕上げています。こちらはジョリパットという商材。色々と使ってきたなかでは、汚れずらくカビも生えずらい。そしてグレーの色は、経年の汚れも目立たなくしてくれるので、使えます。


玄関は、自転車用のスロープがあり、庇がでている場所に自転車を置けます。隣地の擁壁がある暗い場所ですが抜けをつくることで、閉塞感をなくしています。


庭は、西側の奥へ設置。隣地との干渉としつつ、採光面でも有効でした。

ちなみに、建物の配置は、いくつも検討したのですが、以下のような検討。

南側を開けたり、道路側を開けたりしましたが、最終的には平面を最大化して、吹抜を設ける案となりました。

平面的に考えることよりと、立体的に考えることでは、家の中で起こる様々な活動の多様さ違います。特に都心では、密集地に計画することも多いので、立体的にどうやって住むのかという、平面ではない断面を考えることが、ポイントとなります。

立体的に、場所が絡み合い、複雑な関係が作り出されています。


平面も断面も互い違いに余白が繋がるワンルーム空間

「各種素材」

今回のご家族はご夫妻とお子様男子3名。賑やかになるだろうと予想され、庭もあったので内外の出入りも多いはずなので、床材は管理しやすいリノリウム材に。一般的には木のフローリングとすることも多いですが、目地に砂が詰まってしまい、管理がしずらいのも難点。

木の温もりは、壁や天井に任せて、床はリノリウムとしています。この材料は、住宅ではなじみが少ないですが、病院や学校など、賞もが激しい場所や、衛生管理が必要な床に使われる、優れものです。一般的にフローリングよりも若干高価な材料となりますが、アマニ油という自然由来の原料で人体にも安心。

ちなみに、壁と天井は、インテリア用のラーチ合板(ひのき合板)という素材で、吸湿性、消臭性に優れた材料です。施工精度が求められるので、大工さんは大変。クロスよりは高いです。


ポコポコとあいた窓が、暖かい夜景をつくります。

私たちは、見た目の綺麗さを優先して、外からの見た目を整えるよりも、内部の快適性を優先して、内部から見える景色や採光を優先しています。それゆえに、外からみると不揃いな窓が散らばっているようにも見えますが、そのほうが、快適な住空間を創りやすいのです。見た目を優先させると、どこかしらで機能を犠牲にすることになります。

以上、採光が不利な立地での、住宅計画でした。高価な素材を多用しているわけでもなく、安価な部材、普遍的な構造計画として、コストを抑えながらより快適な空間をつくっています。今回は、土地+建物+解体もある計画でしたが、なんとか予算内に収めることができ、工期もほぼ予定通りで、施主ご家族も大満足でした。

―ワクワクを1から考える家づくり―
IYsは、心地よい、楽しい空間を1から考える設計事務所です。ご相談は、計画の初期段階でもZOOM等で随時受け付けておりますので、以下メールより気軽にお問合せください。m(@_@)m
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