IYs井上です。
日に日に秋の陽気になってきましたが、昨日は、一日夏のような陽気で、鎌倉で手掛けていた古民家改修の撮影があったのですが、カメラマンの方も汗だくでした。
こちらの改修は、昨年1年間とりかかっていた事例なのですが、その経過も紆余曲折あったので、ここに書き残しておきたいと思います。
こちらは、改修後の写真。杉板の下見板貼りにグレーの塗装をかけています。庭もしっかりと手入れされ、新旧の境目がわからない外観に。
こちらは、改修前の状態。屋根には瓦がのり、庭の木々も伸びていました。
純和風の外観やお庭は、元々の家主が手をかけて、住んでいた痕跡が残っており、とても印象が良かったのを覚えています。
純和風な玄関の設え。既存です。
たたみのある和室。
縁側があり、天井は垂木あらわしの、雰囲気ある廊下でした。
一部収納や、ミニキッチンがありました。
築100年ともなると、既存の和風の家に対して、恐らくは、近年リフォームされた場所もあり、こちらは和風ではなく、ビニルクロスや新建材による安価な仕様。昔の家のつくりは、素材感があり、最近の家と比べると、手間はかかりますが、本当に良いものだなと感じます。
どこから、安価+手間のかからない+メンテフリー、、的な流れになったのでしょうか。どちらにしてもユーザーがそうしたものを選んでいるという現状には変わりないと思います。
ところで、施主ご家族の要望は、こうした和風の家というよりは、少し現代的でモダンな家にしたい。という要望でした。
既存の家屋は、手が入れられた状態でしたが、築100年ともなると、内部がどうなっているかわかりませんし、こうした古い家屋の場合は、耐震性や断熱の性能がよくありませんので、そうした耐震、や断熱の部分をしっかりとフォローする形で、外壁を残し、ほぼスケルトンとする方針をとりました。
内部が解体されている様子。外壁を残して、内部だけ解体するのも、大変でした。そして、開けてみてびっくりした箇所も多々。。。どうやって改修しようと現場でDIYしているような気分で設計をすすめた記憶があります。その場で設計しているような。
大引きと、束石。基礎は外周部のみ若干の補強がなされておりましたが、内部は、玉石に束が載っている状態。。。耐震性はほぼ無いと言っても過言ではありません。そうしたことも考慮して、屋根の瓦は、大変残念ではありますが、鉄板の屋根に変更することにしました。
地震力は、荷重に比例して大きくなります。なので、屋根を軽くするということは、壁を増すことよりも時には大きな効果があります。特にガルバリウム鋼板と瓦屋根は約8倍の重さの違いがあり、地震力は8分の1に軽減されるということになります。
基礎までやり替えると、そこには非常にコストがかかるため、外周部が基礎の増し打ちが成されていたことを考慮して、基礎はそのままとしました。
さらに、壁の補強を外側からではなく、内側から構造合板を増し打ちする工法をとっています。ただ、既存の柱は、1つとして真っすぐなものはなく、ななめに傾いた状態をできる限り直しながら、その柱や梁に新たな構造材を抱かせることで、構造補強をほどこしました。
断熱材も、現行法規の基準に沿うように、100mm~150mmの断熱を施しています。
改修後は、見違えるような内観に。L字に配置された窓は既存のまま。障子をとりはらい、現代的な設えとしています。壁は、施主ご家族のお知り合いの著名な漆喰職人のお弟子さんという方に塗っていただいたのですが、驚くほど質感があり、この古民家の改修に一味加えていただきました。
リビングから、庭が良く見えます。朝には周囲の山から鳥のさえずりが聞こえ、本当に癒される空間となります。窓を開けると縁側に思わず座りたくなるような風景。
家の中心にはキッチンを。キッチンがメインとなり、食事もキッチンカウンターでとれるようなスタイルです。お店のような雰囲気。
玄関ホールも、天井を高くして、既製品のアルミ引戸が付いていたところを、木製の造作扉に改修。両サイドにはガラスを入れて、明るくなりました。
門扉は、焼杉による造作。入り口がお店のようなので、カフェと間違えて入ってきてしまう方が多いそうです。。。
縁側まわり。建物は、一部坪庭になっていた箇所を増築しており、複雑な屋根も一部架け替えております。この屋根の取り合いも、非常に大変で、既存家屋が増築を重ねていたため、それぞれの屋根勾配が若干無理やり収めているような状態であったため、この増築部分を起点として、屋根の勾配を改修しております。
庭は、グリーンタイガーという職人夫妻が営んでいる植栽屋さんに依頼。
大きなアオダモの木が、美しい庭を作っています。植栽1つでこんなにも見違える庭に。玄関の庇も当初よりも大きく迫り出して、増築しています。現在の法規では、基準が変わってしまいましたが、10㎡以内の増築であれば、申請は不要であったため、申請しないぎりぎりの範囲で改修しております。
築100年の古民家の改修は、やはり大変であることは間違いなく、生半可な経験では、上手く収めることが難しいと思われますが、設計や施工の技術、知恵を絞ることで、こうして生まれ変わり、さらに30年、40年と住み継がれていくことを期待しています。
こうして無事に撮影ができ、快適に住まわれていることに安心した撮影でした。
―ワクワクを1から考える。設計事務所とつくる家―
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