IYs井上です。
建築とは関係のないお話ですが、先日閉会したパラリンピックの一場面のこと。
前回のオリンピックの時は、2016年で私がまだIYsとして独立する前の会社勤めの時でしたのでオリンピックやパラリンピックを見る暇もないような状態だったのですが、今年のオリンピック・パラリンピックは、たくさん見ることができました。
その中でも特に印象に残っているのは、先日のパラリンピックでの車いすテニスの一場面。国枝慎吾さんの決勝戦なのですが、国枝氏が、決勝戦ですが全く守ることなく、どんどん前に出てネット際で勝負していた姿が印象的でした。
私は、高校時代3年間テニスをしていたので、試合で前に出ることの難しさや精神状態を一定にキープすること、大事な試合で力を発揮する難しさはある程度わかります。
車いすテニス事体、恥ずかしながらほとんど観たことはなく、どんなものかすら良く分かっていなかったのですが、普通のテニスさながらの攻防戦、ラリーがありネットプレーもあること驚きました。しかも、車イスに乗った状態なので、急な方向転換は難しいはずですが、ネット際にでることはかなりのリスクが生じますし、ベースラインよりも前でプレーすることも深いボールが来た時に対応しずらいので、ベースラインよりも下がったほうが、安全に返球できる確率もあがります。
決勝戦では相手の選手は、國枝氏の気迫に負けたのかわかりませんが、かなりベースラインよりも下がってプレーしていて、國枝氏が前に前にでていたのが印象的でした。
パラリンピックという4年に1度しかない大会で、リスクを冒してまでも前に出る姿勢には、テニス経験者としても心打たれた場面でとても印象的でした。ラケット競技は、精神状態がプレーに反映しやすい競技だと思います。ちょっとした、精神的な弱気がプレーに反映され、いつもは相手コートに入るボールがアウトになったりします。
仕事とテニスはまた違いますが、やはり設計でも守って安全な設計をしていれば、クライアントからのクレームもなくある程度予想できる良いものが得られますが、保険を考えた設計ばかりしていると、いつのまにか型にはまってしまい、知らず知らずのうちに全く面白みのないものをつくってしまうという落とし穴もあると感じます。
かといって、リスクを冒した設計、やったことのないチャレンジは、得られるものこそ大きいですが検討にも通常の何倍もの労力と失敗もついてきます。やればやるほどそのリスクが目に見えてしまうので、建築家は若い時にやっている作品の方がとがっているものが多いのはそのせいかもしれませんね。
ハウスメーカーが新しいことに後ろ向きなのは、そういう理由もあると思います。ちょっとした変更、更新でもつきまとう相互の調整や確認の量は膨大になります。
とはいえ、設計事務所として独立している限りは、普通の設計をしていても意味がないと思っているので、今後も今までやっていないことを常に発見し新しい快適性を追求していきたいと思った今日この頃。ちょっとした違いや変更を重ねていくことの難しさ、それを超えて良いものをつくっている気迫が仕事にも必要なのだと。
國枝慎吾さんの、プレーにとても心打たれたパラリンピックでした。