設計に特化した設計事務所だからできること、大切にしていることをご紹介します。
IYsは、井上亮と吉村明が主宰する設計事務所です。住宅から公共の建築まで、延べ数百棟におよぶ建物を「実現」してきた実務的な経験値が、私たちの強みです。
個人がSNSで簡単に発信でき、AIによって様々な建築イメージが、誰にでもつくれてしまう昨今では、建築に求められるものは、目に見える「もの」から、身体で感じられる「環境」そのものへと変わってきています。
そうした時代の変化の中で、私たちは、そこに集う人がリラックスできる公園のような「おおらかさ」を内包した建築をつくりたいと考え、設計してきました。明るい日が差し込み、風が抜けるシンプルで心地よい空間は、ストレスフルな現代を生きる私たちにとって、改めて求められている根源的な価値ではないでしょうか。
表面的な設備は時が経てば劣化しますが、身体で感じられる空間的な価値は、時が経っても劣化しません。そして、適切なメンテナンスを行えば、50年、100年と長く使える、また、「長く使いたくなる」建築をつくることができるのです。
高価な設備や、大きな建物を造らずとも、設計の質を上げることで、そこに住む、訪れる人に快適で豊かな空間を広く提供することができるのではないか。そんな仮説のもと、刻々と変化する「今」に合った建築空間を日々模索しています。
バイオフィリアとは、1984年にアメリカの生物学者エドワード. O. ウィルソンによって提唱された「人間には“自然や生命とつながりたい”という本能的欲求がある」という概念で、「バイオ(生物・自然・生命)+フィリア(愛着)」からなる造語です。
澄んだ空の下や、木漏れ日のある公園のベンチにいると、心地よい陽光や、鳥のさえずりが聞こえ、理由なく心地よい幸福感を感じるように、私たちは、本能的に自然や生命の営みと繋がることを、心地よいと感じる感覚をもっています。
私たちは、建物の設計においても、視覚・聴覚・嗅覚・触覚で、そうした人や自然との繋がりを感じられるようにデザインすることで、そこに集う人のモチベーションや幸福感、心身の健康を維持できる空間をつくりたいと考えています。
室内にいながらも、外部空間のようにおおらかに空間が連なることで、限られた場所にも心地よい空間がつくれると考えています。
私たちは、多様さと個性を大切にしています。ここでいう個性とは、その建物が建つ場所であったり、建てることになった経緯であったり、使う人の個性であったります。
異なる環境に生きる動植物が、独自の進化を遂げるように、個別のプロジェクトごとに、他とは違う、その場所、その人だけの個性を発見し、それらを膨らませることで、1つ1つが際立つオリジナルな空間をつくることができると考えています。
それは、設計者が1つの考えを無理やりはめ込むのではなく、プロジェクトごとに異なる個性を設計者が咀嚼し、クライアントと共に再発見するということだと考えています。
私たちはそうした、使う人やその場所にフィットした、個性を内包した建築をつくることで、内と外、人と人、様々な環境をやわらかく繋げる「多様な場」を創造したいと考えています。
つくる人が見える建築でありたい。工業化が進んだ現代では、身近に手にするものや、空間のほとんどは工場で生産され、それをつくる人の影を見ることはありません。更に、インターネットでの買い物が主流となりつつある今、オンライン上で映えるコンセプトやストーリ-は気にする反面、つくる人への意識はさらに小さくなっています。
他方で、1つ1つ違う建築には、裏側で支える職人の力量が大きく影響しています。コンセプトやストーリーでは、品質はつくることができないのです。どの建物も隠されてしまえば、見た目は変わらない。建売を始めとしたローコスト建築の風潮は、見えない部分の手抜き工事を助長し、寿命の短い建築を生みだしてきました。
私たちは、暑い日も寒い日も、朝早くから、配管し、組み立て、隠れてしまうだろう裏側に工夫を凝らす職人と仕事をしています。そうした細かな造作や設計図を実現できる、熟練の職人たちに敬意を払いながら、現場でも施主とつくり手を交えて打ち合わせを重ね、微調整を繰り返します。
つくり手が見えることが、緊張感のある施工を可能にし、愛着の湧く建築づくりを可能にします。
どんなに優れたデザインであっても、夏暑い、冬寒いでは、不快な空間となってしまいます。私たちは、快適な空間をつくるためには、建物の性能設計がとても大切な部分であると考えています。
特に今後50年を考えると、日本でも夏場40度を超す気温や、集中的な豪雨が毎年くることが標準的な環境になることが想定されます。私たちは、暖房設備のない廊下や脱衣所も温度差が少なく、夏すずしく、冬暖かい家づくりのために、1棟ごと異なる建築形状に合わせた温熱性能計算を自社で行い、建物のデザインと性能のバランスがとれた建築の設計を行っています。
近年では、HEAT20のG2※レベル、断熱等級でいえば6という基準が今後の目標値になっていくと考えています。住まいの外皮性能(外部と接する部分の断熱性能)を高めることで、内部は吹き抜けや、スキップフロア等、抜けのある空間と相性が良く、プランにもよりますが、30坪程度の住宅でも、夏もエアコン一台で過ごせる程度の快適な室内環境をつくることも可能です。
これからは、地球温暖化や脱炭素社会への対応を見据えた、デザイン性と性能を両立させる、バランスよい建築の在り方が強く求められていくでしょう。
※6地域で室内温度が概ね13℃を下回らない性能が基準。外皮性能でいうとUa値0.46W/㎡・K以下。地域により外皮性能は変わります。
大きな窓のある広々したリビング、天井の高い抜けのあるスキップフロア。耐震性は担保されながら、様々な魅力ある空間を実現するために、私たちは、特殊な構造計算ができる専門の構造設計者と協業し、1棟ごとに異なる構造解析を行うことで、無駄を省いた合理的な構造計画と、耐震性を兼ね備えた空間を両立させています。
効率を優先した、簡易的な構造設計では実現できない空間も、時間をかけて細かな構造解析を行うことで、無駄な梁や柱をなくしながら、大きな空間を確保することが可能になります。
単純に耐震等級が高いだけでも、バランスが悪い建物は倒壊しやすく、プランに応じてバランスを考慮した構造を実現することが重要になります。そして大きな揺れによる部材の損傷を最小限とするための、制振ダンパーの設置など、地震に耐えるだけではない、損傷を最小限に抑える構造設計を実施します。
見た目のデザインばかりに気を取られ、施工性やメンテナンス性能を無視すると住んだ後に大きなメンテナンスが必要になってしまいます。
事実、代表である私は、前職で施工性の悪いデザイン重視の建物(別会社工事のもの)の雨漏りリフォーム工事の現場に度々立ち会ってきた経験もあり、施工性の悪い複雑な部材の納まりは、意図しない不具合を誘発し、長期的な施主の負担増になるということを身をもって経験してきました。
メンテナンス頻度を増やせば、納まりが悪い建築でもなんとかやり過ごすことはできますが、出ていくお金が大きければ大きいほど、建物に対する施主の想いは薄れていきます。
デザイン的な配慮をすることで、メンテナンス頻度が減り、施主の負担を軽減することができます。そして、新しい素材、設備についても積極的に検討し採用することで、住まいの性能を日々更新し続けています。
また、住宅の場合、各種保証は、躯体の瑕疵保証(10~20年)、白アリ(5~10年)、地盤(10~20年)程度を目安として、他メーカーと比べても遜色のない保証加入を前提として設計します。
いざ家づくりを考え始めると、解体、ローン、諸費用、設計、工務店の選定、、、何から始めてよいかわらず、インターネットを検索すればするほど、様々なことが書いてあり、施主の気苦労は増えるばかり。さらに設計事務所とつくるとなれば、工務店選びや資金計画、その他諸々は自分でやらなくてはならないのでは?と思うとハードルはさらに高くなってしまいます。
IYsでは、資金計画から、不動産のこと、敷地の造成、インフラ整備、解体、測量、外構、登記など、家づくりに関わる煩雑な業務を設計者がワンストップで案内できるようにしています。
延べ数百棟を超える住宅から公共建築までの設計監理の経験を元に、多岐にわたる煩雑な作業を設計者が窓口として案内することで、クライアントの負担は大幅に減ります。
また、工務店や代理店を経由することで発生する経費を削減することができ、施主の時間的な負担も大幅に軽くなりますので、施主が建物の検討に集中することができます。「あああしたい、こうしたい」という要望さえあれば、あとは設計者である私たちが、方法や道筋を考えサポートしています。
建物の完成まで、総合的なディレクションを行うことで、施主にとってストレスのない安心できる建築計画の提供を行います。
規格を設けず、1から設計していく建築は、時間も手間もかかりますが、私たちは、安く早くできるものよりも、丁寧に考え時間をかけてつくることで、長期間にわたって、「気に入って使いたくなるもの」を作りたいと考えています。
建物全体のコスト配分は、各会社によって様々ですが、私たちは不必要な営業経費を削減し、設計でのコストを抑える工夫で、必要な所に予算を配分し適正な価格(※) となるように日々尽力しています。全てが特注で、高級な設備仕様を選べば、あっという間に予算オーバーしますが、施工しやすい工夫やコストを抑えられるプランニング、分離発注の工夫など、力を入れる場所と力を抜く場所を切り替えることで、全体の総費用は驚くほど変わってきます。
工務店は工事に集中し、設計業務は設計事務所へと割り振ることで、本当に必要なものに費用を割くことができるので、余分な経費を削減できると共に、プランや仕様に規格を設けないことで、選択できるデザインの幅を大きく飛躍させています。
大量仕入れで単価を下げ、人件費を削り効率を上げる手法は、同じ性能のものを割安に提供できるという利点の反面、デザインの幅に多くの制約がかかり、規格から外れたデザインでは割高な費用となりやすい性質があります。
1つ1つ個別の見積もりを算出する作業には時間がかかりますが、私たちは、予算に応じた柔軟な建築計画を可能にするため、こうした規格を設けない見積もり方式を採用しています。そして、設計者である我々が、全体の出来上がりイメージをキープしつつ、コストが調整できる項目をピックアップしリスト化することで、施主にもわかりやすいコストコントロールを行います。
※2025年現在、IYsでは、30坪~40坪程度の一般的な木造住宅の平均依頼コストが、建物金額で3000~5000万程度となっております。家具などを含めた同じ施工内容では、大手メーカーと比較しても、むしろ安いことも多々ありますが、設計や諸経費含めた総工費は、計画地ごとに予算立てを行い提示します。
お引き渡し後も、クライアントとのお付き合いは続きます。設計者として初期点検に同行することや、建物に不具合があった際のフォロー、増築、改築、メンテナンス方法等の相談や、その解決の助言など、随時ご相談を受けてつけております。
長期間自分たちで決めて設計を行った住まいは、愛着も湧くもので、みなさま大切に住まわれています。そうした、住まいに対する愛着が建物を長持ちさせる、大きな要因であるとも思っています。
私たちの設計事務所には、みなさん色々な経緯でたどりつくのですが、
「もっと早く問い合わせをしていればよかった、、、。」
と言っていただくことも多く、あらためて設計事務所という敷居の高さをもっと低くしたいと思う今日この頃です。建物が完成するまでは長い間、様々な打合せを行いますし、紆余曲折で困難を施主と一緒に乗り越えていくこともあります。
そして、完成した後も、ずっと相談してもらえるような関係性を築くことが、私たち設計者の一番のアフターフォローなのではないかと思っています。