WORKS

建築もある風景

any where,2022 public

OVERVIEW

大阪万博の休憩施設の提案。

2025年に開催される大阪万博では、「いのち輝く未来社会のデザイン」としたテーマでの建築パビリオンの他に敷地内に多数ある施設の中の1つの応募案である。

今回のテーマでは、持続可能性や地球環境にやさしい社会やデザインがどのように実現できるかというようなテーマであった。

本案は、アースバック工法という土を袋に詰めにして固め、段々とドーム状に積み上げていくというとても原始的な工法に、構造的な+アルファを施して、繋げて建物をつくるという提案だ。

私は、万博というと、奇抜なパビリオンや新奇的な工法をつかった建築家の腕の見せ所的な建築物が多く建つ展示場的なイメージをもっている。人類が自らの社会生活をより快適に実現するために、人が使いやすいように自然の材料を加工し組み合わせて新しいものをつくる。人が中心にあるサイクルだ。

近年着目されている木材の利用も、山からとれた木材を、組み立てやすいように加工し建物をつくったりするわけで、材料は加工するために運搬され端材は一部使われたり廃棄されたりする。

つまり人間が利用しやすいように、自然の物を加工すること自体がたくさんのエネルギーを使うことになり、自然環境を悪化させているともいえる。つくるのであれば、綺麗な方がよいし新しい奇抜なものの方が注目される。人間にとっての使いやすいものは、一方で、非常に手間やコストがかかり、必ずしも環境によいとはいえないのだ。

本案では、万博で様々つくられるパビリオンや建築物の残土を利用して、その場で建築的な場をつくってしまおうという提案であった。土を積み上げる工法なので当然使いずらい部分もあるし、室内の大きさにも限界があるが、材料はその場で出た残土なので運搬もほぼ0に等しく、かかるのは人の手間のみ。

加工による、廃棄もなければ、無駄なエネルギーの消費もない。万博の休憩所としては、あまり使いやすいものではないかもしれないが、どこまでも利便性を追求していく方向性の中で、様々な建築の競い合いをしたとしても本来のテーマである地球環境にやさしいものにはならないのではないかと考えていた。

万博開催地の土壌には、ヒ素などの有害な物質が発見され、万博の土地の残土でつくるという提案であった本案は、残念ながら落選となったが、今後、建築が環境に与える影響をより身近に考える場面が多くなってくると思うこともありこのような提案をした。提案した土で積み上げられた建築の上には、植物の種や土が載せられて、建物は木々や草花で覆われる構想で、建物が中心の建築物をつくるのではなく、建築が他の風景の一部として存在するような状態をつくろうと考えていた。