























OVERVIEW
西新宿にある2世帯住宅の建替え計画である。
以前から建替えの計画はあったが、住宅ローンも含めたスキームが組めず一時は頓挫していたところ、全体の予算組から含めて弊社に相談があり、事前の調査や資金計画、解体工事からIYsが計画した。
施主である家族は、古くからこの地に住んでいたが、古家は鉄骨造ながら祖父がDIYのように建てた、つぎはぎの3階建ての住居となっており、経年変化による下地の傾きや、少ない窓によって、室内に入る光はほとんどない状態であった。
「民泊の騒音・周囲からの視線・商業的な立地」
また、周囲はその立地柄、住宅よりも事務所や賃貸アパートが多く、近年民泊から漏れる近隣騒音や、夜中まで人通りがありそうした視線も気になっていた。新たな住まいでは、そうした騒音を考慮したゾーニングや、視線を考慮した計画が求められた。
「2世帯+αを詰め込む」
求められた部屋は、2世帯分の部屋と1Fには駐車場と倉庫。敷地面積から算出される延べ面積を算出すると、要望の部屋の大きさと数はとれそうになく、さらに、北側からくる斜線制限が、もともと建っていた家では考慮されておらず、新しい家では、大きく3F部分が削られることになった。
そのため急傾斜に削られる斜線目いっぱいに急こう配の屋根をつくり、その部分も部屋として活かす計画を考えた。各階の高さを詰めることや、1Fを少し埋めることで、3Fの低い部分でも部屋として使えるくらいの高さに調整していった。
急こう配の屋根の下は、屋根裏部屋のような個室や、リビングの本棚となり、その急こう配の屋根が延長するように、屋上のペントハウスへとつないだ外観とした。周囲は事務所ビルも多く、3F以上の建物も多かったため、なるべく高さを出すことで周辺の建物に埋もれないように配慮した。
「建物と敷地の間のデザイン」
周辺からの視線には、半透過する幕を窓の外へ設けることで解決した。この膜は、隣地との隙間50㎝の間に設けられており、建蔽率には入らない、いわば建築としては認識されないものである。
他方で、窓の外側にもう一層の膜があることで、視線を遮りつつ、日射も遮り、窓を開けても心理的な安心感をつうく効果を期待した。実際に、使っている施主からは、守られている感覚があると感想をいただいた。あまり見かけない外観であるが、半分商業的な用途が混じる新宿という立地を考えると、都心の住宅といてはこうした形が逆に馴染むように感じた。
採光面でも、大きくとった窓から明るい日差しが、階段室や各部屋へと差込むようになった。
立地の良い都心の住まいを貸し出して、自分たちは郊外へと移り住むという選択もあったと思うが、古くから代々受け継いできた地に住みたいという想いがあるものまた1つであり、そうした施主家族の想いが、新しい住まいの形をつくっている。
屋上は、周囲の高層ビルが見え、夜景を楽しみながら、2世帯でささやかに集まることができる。都心に住むことのデメリットを逆手にとり快適に生活できる家となったと感じている。
ーーー建築情報ーーー
所在地:東京都新宿区
用途地域:第2種住居地域
規模:約195㎡
主用途:2世帯住宅(玄関、階段室を共有)
竣工:2024年
意匠計画:IYs-Inoue Yoshimura studio-
照明計画:IYs-Inoue Yoshimura studio-
構造設計:川田知典構造設計
施工:株式会社坂牧工務店
写真:渡邊 聖爾
主な素材
屋根:ガルバリウム鋼板、遮熱通気工法
基礎:べた基礎
断熱:高性能グラスウール
外壁:窯業系サイディング+溶融亜鉛メッキ透過膜パネル
サッシ:アルミ樹脂複合サッシ
内壁:ビニルクロス、シナ合板、フレキシブルボード
キッチン:大工造作+塗装、コーリアン天板
床材:複合突板フローリング、ゴムタイル
設計期間:約6か月
施工期間:約6か月+外構