OVERVIEW
都内にあるオフィスビルの建て替え計画案。
ワンフロア300㎡弱の中規模の賃貸ビルの場合、賃借人がどのようにも使えるような空間が求められるため、内部空間のフレキシビリティを担保する構造を有した床の積み重なるとなることが多い。この形式は、貸す方にも借りる方にも都合がよいためほとんどのオフィスビルの形式はこのような床の増幅といえる。
一方で、こうしたお金を生み出す装置のようなビル群は、均質な空間と同じような街並みを形成しているように感じる。本提案では、賃貸時のフレキシビリティを最大限確保する定石の形式ではなく、建物を縦に3分割して大中小のタワー型の3つの棟に分割し、個々の部屋の多様性を最大限創出する方向での提案を行った。各棟の間は、2方向入口のエレベーターで繋がれており棟と棟をまたがって移動が可能。
また、各層の階高も高いものから低いものまで、全て別々のバリエーションとし、それぞれに別々のデザイン趣向の窓を与えた。一般的な、プレーンな空間をどのようにでも使うことができるオフィス空間ではなく、最初にオフィスの特徴があり、その特徴を踏まえて賃借人が入るという、真逆の順序をもったオフィスビルだ。オフィス空間は、1つの大きな場として借りるというよりは、2つ3つを繋げて借りることができ、多様なバリエーションのオフィスが生まれる。
21世紀を生きる私たちは、日本という1つの国にいながら、中国製の服をきて、イタリア製の靴を履き、ブラジル産の果物を食べ、韓国のエンタメを楽しんでいる。一見支離滅裂な組み合わせを楽しみながら、現代空間を過ごしてる。同質なものの集積がつくる空間ではなく、個別の質をもった集積が新しい空間の利用や街並みをつくる。そうした部分と部分が無作為に組み合わさるような集合のあり方もあるのではないかと考えた。
計画地:東京都
規模:延床約2500㎡
意匠計画:IYs-Inoue Yoshimura studio-
主用途:賃貸オフィス
構造:S+RC