IYs井上です。
私たちが設計した設計事例を写真と共に解説する事例解説その2。
前回は、マンションのフルリノベでしたが、今回は、木造の住宅で、ほとんど直角がない家。
床が三角でほとんど直交したところがない、家です。
LDKの様子リビングには横長の大きな窓
何故、このような形になったのでしょうか。。。?
ただ単に、奇抜な家をつくりたかった、、、というわけではなく、実は敷地の形状に関わっています。この案にたどり着くまでは50以上の案を出し、模型をつくり、どの形が良いかを検討ました。
敷地の東側は、ひらけていた
旗竿地且つ台形地
敷地は、旗竿形状で2F建てがやっと入るくらいの、狭小地でした。家をたてれば庭はのこらず、ほぼ目いっぱいに建てて30坪強の大きさ。その上、敷地は微妙に台形となっていたので、一般的な直交グリッドを採用すると、カクカクした形状になってしまい、上手く面積をとることができませんでした。
いろいろと案を検討したあげく、最後にいきついたのが、台形の土地の形状そのままに建てて、平面を2つに割るというプランニングでした。割った床は、段差をつけて、それぞれが個室であったりダイニングであったり、リビングであったりしています。
1m程度ずれた床
屋根も斜線制限の影響を受けて、北側は低くつくらなければいけませんでした。なので、天井もフラットではなく、斜線制限なりにつくることで、制限内に許す限りの気積を詰め込んでいます。フラットな天井の場合は、一部だけ斜線にきれて斜めになっていたりしますが、斜線沿いの空間は、その制限を感じさせない伸びやかさがあります。
リビングからダイニング側をみる
階段から1Fと2Fをみる
プランは対角線に2つにわっただけなので、階段の位置も形状も普通とはことなります。不思議な見え方をしていますが、そこがこの家のワクワクポイント。
1Fの玄関ホール
1Fは、床のずれを反映した天井高さ3.5mの土間となっています。玄関をあけるといきなりこの大空間。
普通であれば、玄関をつくって、廊下をつくって部屋へ、、、となりますが、巨大な玄関ホールのような場所。なんとも部屋名をつけがたいような空間ですが、実は家族の収納空間にもなっていて、またひんやりとした空間は、夏場書斎にもなっています。
隙間から1Fが見える
玄関とSICをみる。階段形状もいびつ
普通であれば、個室や玄関やリビング等の機能が先に在り、部屋の形をきめますが、この家は先に形があり、そこに機能をはめているイメージ。たまたま、使えそうな形になったので、採用されましたが奇跡的な採用でした。普通であれば、このようなプランニングで生活が成り立ちません。
一方で、この逆発送のプランニングがあるからこその、空間的な新鮮さ、日々の生活の楽しさが得られていると、出来てからとても感じました。
個室も、歪な形なのですが、ベッドルームの天井が1.5mだったり、寝台列車のように床をつくって寝たりする予定だったりと、普通ではありえない生活スタイルとなっています。
住まい手が何を好むかは、本当に住む人次第で、逆に設計者がこうでなきゃと考えすぎているところもあると思います。
キッチンは、大工造作でモールテックを仕上げに採用。微妙なベージュトーンです。バックセットはパイン集成材。家具のようなキッチンです。
キッチン上部には、ロフトが。ロフトは畳程度あるのですが、子供たちの秘密基地状態です。四角い部屋ではない場所は、子供たちが特に好みます。
この土間の先端の細い場所も子供のお気に入りの場所。通常であれば、こういう場所はなくしてください!!と言われてしまう場所ですが、こういう場所ほど子供たちが好みます。
これまで、設計をしていて気が付くことがあるのは、建物が四角い部屋の連続の理由は、経済的な合理性(土地や家具や建材は四角い方が収めやすいので経済的に合理性がある)からきているのですが、その合理性は人間社会が作り出した合理性であるだけで、言い方があれですが、動物に近い子供たちの発想では、四角い場所ではなく、いびつな場所の方が心地よいのだなぁと感じます。
実はそれは、大人にも言えることで、いつの間にか四角いほうがよいと刷り込まれてしまっているだけなのではないかと、日々感じています。この家では直交する壁があまりないのですが、この感覚は、公園や街中など自然の中にいる感覚に近いと感じました。自然の中には直交する場所はありません。
ななめの線がもつ快適さの可能性に触れた住宅の設計でした。
夜はまた照明で異なる雰囲気に。
各平面の形と断面
ななめの線が生み出す、いつもの違う感覚が刺激的で、快適な空間でした。ちなみに、施主家族は大満足で住んでいて、行くたびにいろいろな工夫のある家具が置かれ、グレードアップしています。
こういう家に住む人は、インテリアのレベルも高いです。。。
ロフトから見おろした風景。
向かって右側の上段のリビングは低い所で1.2mほどの高さしかありませんが、上段の床はカーペットなので、座って過ごせるので問題なく使えています。
階段も居場所になっています。
設計事務所で住宅をつくっていると、いろいろな特殊な事例を手掛けることもありますが、私たちが意識していることは、たんなる見た目だけの奇抜さはなにも生み出さないということ。常に、さまざまな問題や要望を解決する手段として、新しい発想を考えています。もちろんコストに跳ね返ってきて、苦労することも多いのですがそれ以上に得られることもたくさんあります。
ただ、普通でないということばかりを狙いすぎると、メンテナンス性や、日々の使い勝手に支障がでてきてしまいます。クライアントの趣向と私たちのアイディアとコストと、施工者の技がかみ合ってはじめて、こうした住宅ができるので、軽々しく真似ると痛い目に合いますのでご注意を。笑
―ワクワクを1から考える家づくり―
IYsは、心地よい、楽しい空間を1から考える設計事務所です。ご相談は、計画の初期段階でもZOOM等で随時受け付けておりますので、以下メールより気軽にお問合せください。m(@_@)m
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